(デザイナー解説)
南米ペルーは、洋服の原料となる様々な繊維を生み出すファッション産業にとって魅力的な国だ。ここは高級コットンである超長綿の故郷でもある。
何千年にも渡ってペルーで栽培されてきた綿が、スペイン人の入植以降、奴隷貿易船などによって各地に運ばれ、 海島綿やエジプト綿などの高級コットンが生まれたと考えられている。
ペルーでも羊が飼育されている。南米でのウール生産は、もう少し緯度の高いウルグアイやアルゼンチンが盛んだ。 しかしペルーのアンデス山脈中腹でも、ハイランドウールと呼ばれる、クリンプが豊かで良く膨らむウールが育てられている。繊維の宝石と呼ばれるビキューナもいる。その毛はカシミアより細く、最も高級な繊維として知られる。
そしてアルパカ。二十二色と言われる天然色を持ち、羊より大きな体から採れる毛全てが繊維として使えるシングルフリースで、その毛は丈夫で長持ちする。長年の研究の結果、近年では、細い毛の比率が高まり着心地も良くなっている。そんな魅力的な繊維の生み出される現場を見に、度々一人旅でペルーに通っている。東側に広がるジャングルから標高四千mを超えるアンデスの高山地帯までを訪れ、現地の人達や動植物と触れあい、日本に紹介している。そんな旅で出会った、魅力的な原料を組み合わせて作ったのがこの生地である。フワフワとした毛はアルパカ。
染めていないナチュラルカラーだ。染めないことで硬くならずに素晴らしい風合いを保っている。
裏面はコットン。ペルーピマを染めたものだ。アルパカは日本で、コットンはペルーで糸にし、和歌山県のカネキチ工業の吊り編み機で編み上げた。農業から編み立てまでじっくり時間のかかった、素晴らしい風合いのスローファッションである。